東京地方裁判所 昭和42年(行ウ)124号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕小石川税務署長が原告の昭和三八年一二月一日から昭和三九年一一月三〇日までの事業年度の法人税について原告主張のごとき理由で主張のごとき再更正および賦課決定を行なつたことは当事者間に争いがない。
本訴は、もをより右再更正および賦課決定の取消しを求めるものではなく、それが違法であることを前提として、かかる違法な課税処分によつて原告の被つた損害の賠償を求めるものであるので、まず、右再原正および賦課決定を行なつた小石川税務署長に故意又は過失があつたかどうかについて判断することとする。
原告会社の発行済株式総数は、五、〇〇〇株であり、そのうち三、一〇〇株を代表取締役の高橋省吾が、八〇〇株を取締役の倉持仁が、六〇〇株を取締役の涌井陽太郎が、四〇〇株を取締役の宮城嘉春が、一〇〇株を監査役の佐久間庸夫がそれぞれ所有していたことおよび右三名の取締役が使用人兼務役員であつたことは、原告の認めて争わないところであるから、原告会社は同族会社であり、しかも、右三名の取締役は同族会社の判定の基礎となる役員で、しかも使用人兼務役員であつたというべきである。ところで、旧規則一〇条の四但書は、使用人兼務役員に対する賞与のうち、当該使用人としての職務に対するものと認められる相当の部分は、所得の計算にあたり、特に、損金に算入するととしているが、同条の三第六項四号は、同族会社の役員のうち同族会社の判定の基礎となる株主、社員もしくは同族間係者を使用人兼務役員から除外する旨規定しているので、法文上は、これらの役員が使用人としての職務を兼ねているとしても、それに対する賞与は、一応、損金に算入されないこととなつており、前記再更正および賦課決定の行なわれた昭和四一年六月二九日当時、右条項の効力について、これを租税法律主義に違反して無効であるとする裁判例(たとえば、大阪地方裁判所昭和四一年五月三〇日判決・行裁集一七・五五九一参照)はあつたが、反対に、これが有効であるとする裁判例たとえば、福岡高等裁判所昭和四〇年一二月二一日判決行裁集一六・一二・一九四二参照)もあり、その見解が分かれていたことは、当裁判所に顕著な事実であるから、かような事情のもとにおいて、小石川税務署長が右規則条項を有効なものと認め、右事実間係に照合して前記再更正および賦課決定を行なつたことは、法令の効力について独自の判断権がなく、むしろ、その執行を任務とする同署長としては、当然の措置であつて、もとより、故意又は過失をもつて論難すべき限りではないというべきである(最高裁判所昭和四一年二月一八日判決、判例時報五五二号四七頁等参照)。もつとも、小石川税務署長は、大阪高等裁判所昭和四三年六月二八日判決(行裁集一九・六・一一三〇)に依拠して右再更正および賦課決定をみずから取り消してはいるが、該判決は、もとより、右再更正および賦課決定後になされたものであるから、これをもつて同署長の故意又は過失の有無を判定する資料となし得ないことは、いうまでもないところである。(渡部吉隆 中平健吉 渡辺昭)